君の思いに届くまで
7章
7章


琉は元フィアンセからの手紙を丁寧に折りたたむと封筒にいれ、座ったまま長い腕を伸ばして自分のデスクの上に置いた。

そして、私に視線を向けると軽くため息をついて少し困ったような顔をして微笑んだ。

そんな琉の微笑みに胸が痛くなった。

「元、フィアンセの方?」

私が聞くのは筋違いだけど、今の琉は私の当時の存在を知らないままだから・・・。

「うん。元、なんて付けて意味深だよね」

私は何も言わずうつむいた。

「色々あってね。もうフィアンセではないけれど今は一人の友人として付き合っている。僕との間に起こった出来事が発端で彼女は深い心の傷を負ってしまった。少しずつだけど社会復帰もめざしているようだ。安心したよ」

「そう、ですか」

あの日の後の彼女のことは、正直知らなかった。

ただ、深く傷付けたのは琉だけではなく私のせいでもあるから。

琉は、苦しそうな表情を浮かべながら続けた。

「だけど、僕が何をして彼女をそこまで追いやったのかも、実は覚えていないんだ」

そう言うと、息を深く吐いて窓の奥に目を向けた。

「そうだ。話の途中だったね。僕の身に二年前に起こったこと」

その瞬間体がビクンと震えた、

聞くのが恐いような…でもここまで来たら知らないといけないような気がした。
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