セルロイド・ラヴァ‘S
12時のお昼休憩に入って、駅のコンビニで買ったおにぎりと、愁一さんが持たせてくれたおかず入りの小さなタッパーを自分の机に広げた。家からお弁当を作って持って来る時もあれば、朝コンビニに寄ったり。愁一さんのところから出勤する時は、今日みたいに夜の残りを詰めて持
たせてくれたりもする。・・・とても気遣いの深い人だと感謝しかない。

早めに食べ終え歯磨きと化粧直しを済ませてから、羽鳥さんにラインを入れた。

“お疲れさまです。突然ですみません、今日の夜は予定はありますか?”

既読になったとしてもすぐに返信が来るとは限らない。そう思っていたのに、あっという間に来た。

“デートの誘いなら喜んで!(笑)”

“期待に添えなくて残念ですが。彼がお世話になってる羽鳥さんに挨拶をしたいそうなので。・・・断ってくださって結構です”

果たしてこの文面で伝わるかと私は苦い思いで文字を打った。すると。

 “いま電話できる?”

そう返って私は通話をタップした。社内には誰もいない。ツーコール目で繋がる。

「お疲れさまです」

『ん、お疲れ。・・・で?昨日の今日で彼氏が俺に会いたいって?』

羽鳥さんの声音は面白がっているようにも聴こえた。

『いいよ会う。それでいいだろ?』

「羽鳥さん、でもあの・・・!」

『お前の立場を悪くするつもりは無いし、男同士のオトナの腹の探り合いってとこだろ。まあ俺の得意分野だし、楽しみにしてるよ』

私の不安をよそに事も無げな様子で。今日はすぐに上がれるからと、7時半頃に駅の自宅方面出口での待ち合わせを簡単に決められてしまった。

これは私の咎・・・?愁一さんの真意と羽鳥さんの思惑。二人が相対することになるなんて。どうして私はあんなに愁一さんに惹かれながら、羽鳥さんが入り込もうとする隙間を埋めずにいたのか。眸をきつく歪める。
 
だとしても私は。愁一さんのもので在りたい。・・・分かるのは今はそれだけ。



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