バレンタイン・プレゼント
それでも私は、自分自身に失望した素振りなど顔に出さずに「それじゃあおやすみなさい」と言うと、サッサと車を降りた。
私がドアを閉める間際、「気をつけて」と言ってくれた如月さんの安定した低音が、体中にジンと染み入った。

何だか、悲しいけどそれ以上に嬉しい。ヘンなの。

私は、「如月さんもお気をつけて」と言って一礼すると、一人暮らしの住処に向かって歩き出した。
私の目には、自分の「ヘンな」気持ちを表すかのように、うっすらと涙が光っていた。

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