バレンタイン・プレゼント
如月十四郎(きさらぎ・じゅうしろう)さんは、私より7つ年上の36歳。
そして私と同じ、あずま興産に勤めている。
如月さんは中東地区の石油採掘権を獲得・交渉する営業部に所属している。その中でもかなりできるエリート社員だと、庶務課の私にも聞こえてくるほど噂されていた。

如月さんと私は、所属している課が違うし、同期入社というような、知り合いになるような共通点もなく、仕事上での接点も無いに等しい。
だから社内のマンモスビル内で会うことも、ほとんどなかった。如月さんが私のことを知らなかったとしても無理はない。
私は元々存在感が薄い方だし・・。

そんな私たちが初めて話をしたのは、梅雨明け宣言があったばかりの、蒸し暑い7月半ば過ぎ。帰宅途中の地下鉄の中で。
しかも内気な私から、如月さんに話しかけたのだった―――。

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