イミテーションラブ
カーテン越しに朝日が眩しいのと、いつもと違う肌寒さに目が覚めた。
普段スエットを着て寝ているから寒いはずないのにと思った瞬間思い出した。
あるはずの無い息遣いが隣から聞こえてくる。
「田崎…」
見慣れたその顔に昨夜の事を思い出してしまった。
優しく抱きしめてくれて、自分を宝物のように大事にしてくれた。
私を慰めてくれただけなのかもしれないけど、田崎がいてくれなかったら、悲しすぎてきっと眠れなかったと思う。
眠っている田崎の顔を見ていたら、彼の瞼が少し動いて目を覚ました。
「…起きた?」
まだ寝ぼけているのか、田崎はボーッとしたままだ。
「眠い…」
そう言うと、私の首に手を回して自分の懐に抱きよせる。
「ちょっ…!」
昨日の夜を思い出させるようにゆっくりと私の唇を奪っていく。
「なあ、今日は休みだし、どっか行く?」
唇をやっと解放して、当然のように提案する田崎の質問。
「どっかって、どこ?」
「デートにぴったりな場所」
「それってどこなの?」
「どこだろな、ハハッ!」
何が可笑しいのか、ご機嫌な田崎の顔に私はうっかり見惚れてしまった。
それにデートって凄く久しぶりで、同僚としてじゃなく、女性として見てくれて嬉しかった。
「悪いけど、あっち向いててくれる?」
着替えてる所を見られたくなくて、田崎に背を向けるようにお願いした。
「今更?」
そう言いながらも、顔を背けてくれる。
クローゼットから着替えを取り出して、急いで服を着ようと、袖に手を通す。
「遅い!」
ビックリして振り向くと、既に着替え終わった田崎涼介が私を覗き込む様に立っている。
「…脱ぐの手伝おうか?」
ニヤリと田崎がからかう。
「それ逆だからっ」
「フハッ!」
私との会話を楽しんでるのか、田崎はふざけた態度だ。
着替え終わって、化粧したりと身支度を整え、ようやく完了した。
今日の予定を話し合うために駅前のカフェまで二人で歩くことにした。
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