素直になれない、金曜日
いいの、それで。
“好きになった”
それだけが私のすべてでも。
だって、私と砂川くんじゃあ、
あまりにも不釣り合いだ。
きっと私には砂川くんがくれたものの半分も返せない。
「甘ったれんじゃねーよ」
突然、恭ちゃんがソファから立ち上がって、低く苛立ったような声を私に落とした。
「ひよりのそういうとこ、嫌い。無理だって最初から決めつけて、本音から逃げようとする。傷つくことが怖いのはわかるけど、おまえのはただ逃げてるだけなんだよ」
「っ!」
「ほんとうに少しでも思わねえの? もっと、アイツのこと知りたい、とか近づきたい、とか好かれたい────とか」
恭ちゃんが私に真っ直ぐに向ける言葉はいつも容赦なく心に突き刺さる。
「悪いけど。最初から無理って決めつけて、自分のことを下げるばかりで、それで勝手に納得して努力もせずに諦めて。相手の気持ちに真正面から向き合う覚悟のない奴に」
───だれかのこと “好き” だとかほざく資格なんてない。
ぐっ、と唇を噛み締めるだけで何も言わない私に痺れを切らして、腕時計をちらりと確認した恭ちゃんは。
「……今の、聞き流してくれていいから」
そっとそう告げて、リビングから出て行ってしまう。
少しすると、玄関のドアがガチャリと音を立てたから、きっとそのまま帰ったのだろう。