『ドルチェ♬』
『着いたぞ!詩乃。』

『はぁ…はぁ…、着いたって…どこっ…?』

旧校舎の一番奥の空き教室と言ってもいいほど奥にある空き教室前でいきなり足を止めた裕翔に手を解放され私は走り続けて上がっていた息を必死に整える。

『どこって、バンド部の部室だよ。』

バンド部…部室?

ドヤ顔でそういう裕翔にまだ今の状況が理解できない私は、どうしてここに連れてこられたのかも理解出来なかった。

ただ、目の前にある裕翔のいうバンド部の部室の扉の向こうから微かにギターだと思われる音が聞こえてくることには気づいていた。

『中で、俺の友達がギター弾いてんだ。他の人いるとアイツきっと演奏止めるからここでこっそり覗き聞いてみろよ、すげー感動するからさ…』

裕翔はコソコソと声を潜めて言うなりバンド部の扉を静かに数センチ開くとそこから部室内を覗くように私を急かしてくる。

裕翔の友達って、あのバンド部を裕翔と設立しようとしている人だよね…?

いまだに状況が理解できないながらも言われた通り部室内を覗き見た私は、

中の様子に目を見開いた…。
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