私の愛しいポリアンナ



しかし、秋は忘れていたのだ。
「美味しい!」と感動してがぶ飲みした赤ワインは、後に来る、ということを。
つまり、秋とみのり、後先考えずに飲み酔っ払った2人はあっさりダウンしたのだ。
部下の生ぬるい視線が痛いが、全身を覆う気持ち悪さの方が不快だ。
秋はそのままトイレとお友達になり、情けないことに部下に介抱された。

数十分後。
なんとか気持ち悪さのピークは通り過ぎた。
秋はグラグラする思考の中でも、介抱してくれた部下に礼を言い、なんとか笑って見せた。
秋の上司としての面子はとっくに潰れているが。
しかしそんなことは今はいいのだ。
大事なのは、みのりと部下の見合いだ。
秋とみのりが酔っ払った事で場はグダグダになってしまったが、今日は2人をくっつけて俺はいい気分で眠る予定だったのだ。

「みのりは?」

トイレから出たところで部下にそう聞くと、彼はなんとも微妙な顔をした。
なんだ、もしかしてあの女吐いたのか?
酔っ払いにはよくあることだろう。
全裸になって漏らさないだけマシだ、と秋は言おうと思ったが、口の中の気持ち悪さにえずいて声は出なかった。
部下はなんとも申し訳なさそうに秋にこう言った。

「設楽さん、怒らないであげてくださいよ」

なんだ?一体何をしたんだあの女は。
秋の機嫌が急降下する。
もしも俺のお気に入りの赤い毛の長いマットレスに嘔吐していたらぶん殴ってやる、とまで考えた。
ちなみに芹沢みのりは初めて秋の住居に足を踏み入れた時、そのマットを一目見て「赤って、うわぁ・・・」と引いた目をしていた。
部下にそろそろと連れられ、やってきたのは秋の寝室。


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