私の愛しいポリアンナ


「なに殴ってるんですか!?ジャイアンだって殴る前に一言は話しますよ!」

「あんたさっきから俺とジャイアンを比較してなにがしたいんだ」

「冷静になってほしいんですよ!この状況、訴えられたら負けますからね!」

暴行罪ですよ暴行罪!
みのりの話も途中で聞くのをやめ、倒れこんで呆然としている男に近寄る。
しゃがみこんで目線を合わせる。
秋に殴られた左頬が真っ赤になっていた。
風呂には入ったのか全体的にはさっぱりしていたが、来ている服はヨレヨレもいいところだ。
歯は虫歯だらけで真っ黒になっているのが見て取れる。
ホームレスか、と秋は検討をつけた。

「鍵、よこせ」

低めの声でそういえば、男はびくりと体を揺らした。
挙動不審な様子でアセアセと胸ポケットを探りだす。
ズボンのポケット、尻ポケットと落ち着かない様子で探して、ようやく見つけたらしい鍵をぐいっと秋に押し付ける。
そしてそのまま、ドタドタと慌ただしく走り出し、倒れこむようにドアを開けて外に出て行った。
靴も履かずに裸足で。



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