私の愛しいポリアンナ



そうしてものの数十分で着いたみのり宅。
問答無用で鍵を奪い荒々しくドアを開ける。
なんの前触れもなく勢いよく開いたドアに驚いたのか、洗面所から呆然とした男が出迎えてくれた。
口に歯ブラシを突っ込んでいるところから、就寝前だったのだろう。
「設楽さん落ち着いて!」と止めるみのりの声も無視した。
ぽかんとする男にずんずん歩いて近く。
靴を脱ぐのを忘れたが些細なことだろう。
そうして、男との距離はもう10センチもないというところに来て。

設楽秋は、何の前触れもなく、呆然とする男の横っ面を叩きのめした。
バチーンッといういい音がひびきわたる。
男がくわえていた歯ブラシが勢いよく吹っ飛ぶ。
男自身も壁に頭を打ち付けた。
歯ブラシとともに飛び散った白い液体は歯磨き粉だろう。
汚いなぁ、と秋は思った。

「しっ、設楽さんっ!」

みのりのヒステリックな声が耳にうるさい。
秋は顔をしかめ「何だ」とみのりに言えば、今度はみのりが怒鳴ってきた。



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