私の愛しいポリアンナ




男の人の車の中で寝るのは、いささか女としては危険かとも考えたが、秋に限って間違いは起こらない気がした。
男は狼なんていう歌があったが、当てはまらない男もいるだろう。
みのりの隣でビートルを運転する秋なんて、女性には困らなさそうだし。
わざわざみのりに手を出す気も起きないような男だ。

そんなことを考えながらみのりはウトウトしていた。
意識がなくなりかけた頃、「起きろ」という秋の声が響いてきた。

重たい瞼を上げると、フロントガラスの向こうに、キラキラ光る青が広がっていた。
海だ。
朝焼け前の、青い空気の中で、海が静かに光っていた。


「なんで海ですか?」

「なんとなく」


秋はドアロックを解除し、車から降りる。
みのりも彼に続いた。
座りっぱなしだった腰がもぞもぞする。

ただでさえ普段座り仕事だからか、最近は座り続けると腰に違和感を覚えるようになった。
年かなぁ。
エコノミー症候群の予防ってどうするのがいいんだろう。
やっぱり運動とかストレッチかな。

起き抜けの頭でみのりはぼんやりと考えた。





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