初恋のクローバー


「…ハァ……ハァッ………ふぅー」


軽いランニングを終えたあと、緑が生い茂る木の下でひとつ息をつく。


「んー……いい天気っ」


腕を上にあげて体を伸ばすと、気持ちのいい風が吹き抜けた。


そのまま隣を見上げれば、熱気に溢れる大きな会場が視界に広がる。


「盛り上がってるなぁ〜」


懐かしい感覚に、自然と笑みがあふれた。


「あ、いた!風結先輩っ!」


「ん?」


後ろから声をかけられて振り向けば、同じジャージを着た女の子の姿が目に映った。


「そろそろ時間なので、戻ってください!」


「あっ、ごめん!時計見てなかった」


「いえ、だいじょぶですっ!先に行ってるので、先輩はゆっくり来て平気です!」


「りょーかいっ。ありがとね」


「はいっ!」


「………後輩って、可愛いなぁ」


髪を揺らして元気に走っていく後ろ姿に、思わず本音がこぼれる。


「想像してたのとは全然違ったな……」


私は苦笑しながら、仲間のところに戻ったあの日のことを思い出した。

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