包み愛~あなたの胸で眠らせて~
二人でこもっていたと知られたら、真面目に仕事をしてたとしても変に勘繰られるかもしれない。

もう噂されたくないし、広海くんに迷惑を掛けたくない。


「そんなことしないほうがいいと思うけど」

「大丈夫だって。それに課長にはもう了解を得てるから」

「うん……」


知らない間に課長にまで根回しまでしてあったとは……でも、広海くんは私のために考えてくれている。

私はあげた顔を広海くんの胸にうずめた。彼はぎゅっと私を抱きしめる。

守ると言われたから安心はしたけど、大丈夫は素直に受け止められない。不安な気持ちは簡単になくならない。


「紗世、絶対守るから」

「うん」


不安な気持ちはなくならないけれど、信じるしかない。

『守る』と何度も固い意思を見せる広海くんを信じる。私も彼の背中に腕を回して力を入れる。

ぎゅっと抱き締め返すとまた広海くんも腕に力を入れた。

私たちはどちらからともなく笑った。


「きりがないな」

「そうだね。でも、安心できる」

「俺も」


私たちは、再び笑いあった。
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