包み愛~あなたの胸で眠らせて~
しかし、どんなに気を付けていても想定外のことは起こる。前触れもなしに業務を指示されることはあるのだ。

あと一時間で昼休みだなと時間を確認した時、部長から声を掛けられた。


「片瀬さん。急で申し訳ないんだけど、ちょっとお願いしてもいいかな?」

「はい、なんでしょう?」


私は返事をして、立ち上がった。

部長直々で業務を依頼されることは珍しい。急を要し、課長が不在だからだろう。

私に出来ることであれば、どんな指示でもちゃんと応えたいと背筋を伸ばす。


「片瀬さんが英語堪能だと聞いたんだけど、それで渡部(わたべ)さんを手伝ってもらえる?」

「あ、はい……」


部長の口から出た社員の名前を聞いて、覇気のない返事をしてしまう。渡部さん……腰近くまであるストレートの紙を紺色のシュシュでひとつにまとめた彼女は、先週私を非難してきた一人である。

渡部さんも部長が私に頼むと思っていなかったらしく、驚きの顔でこちらを見た。私も同じタイミングで彼女にちらっと目を向けたため、目が合ってしまい慌てて逸らした。
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