包み愛~あなたの胸で眠らせて~
この期に及んで、まだしらじらしい嘘をつく。こごまで図々しくなれることにある意味尊敬してしまう。私にもこんな図太さがあったら……。


「手伝うと言ったのは俺からですけど」

「こういう腹黒い人は手伝わせるように仕向けるのよ。池永くんが優しいからって。池永くんも忙しいのに、ひどいわね」


ひどいのはそっちでしょ!と噛み付きたくなる。だけど、やっぱり私にはそこまで言える勇気がない。

手伝ってもらうよう仕向けたつもりはもちろんないが、他の人から見たらそう思われることのだろうか。

手伝ってくれるというのを甘えてしまったからいけないんだろうか。

自分の行動が誤解を招くことになったから責められるのかもと足元を見つめて、思い返していると、横から伸びてきた腕が肩をそっと掴む。

ハッと掴んだ広海くんを見る。


「大丈夫。紗世は何も悪いことしてない」

「でも……」

「なによ、紗世って名前で呼ぶほどの仲なの? 付き合ってもいないのに名前で呼ばさせるなんて、どういう神経してるのよ」


渡部さんは腰に両手を当て、私を睨む。私を名前で呼んだのが気に入らないようだった。どこまでも私を悪者に仕立て上げようとする。
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