包み愛~あなたの胸で眠らせて~
躊躇う気持ちはあっても心配の気持ちの方が勝って、翌日の朝、広海くんの部屋を訪れた。

インターホンを鳴らしてみたが、反応がない。寝ていて気付かないのかもと何度か鳴らして待ってみる。出てくる気配が一向に感じられなかった。

もしかしたら、病院に行っていて留守なのかもとポケットに入れてあったスマホで時間を確認するが、まだ8時前。

病院に行くには早い。早いといえば!とハッと今の自分の行動を省みる。

ここに来たのだって早い。具合が悪いのだからまだ寝ていても不思議ではない。それなのに、寝ているのを起こそうとするなんて、迷惑極りない。

朝ご飯を食べてもらおうと深く考えないで来てしまったけど、なんという迷惑行為なんだろうか。

自分勝手な行動をするバカな自分を叱責して、出直そうとドアに背を向けた。しかし、まだ温かい土鍋をしっかりと持った状態で振り向く。

きっちり閉まっているドア……やっぱり昨夜拒絶された?

ここにいるのが私だとわかっているから、出てこない?

なにか嫌われることをしてしまった?

寝ているから気付かないだけなのかもしれないのに、悪いことばかり考えてしまう。
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