不埒な先生のいびつな溺愛
私が舌を動かしたことで、先生は私が目を覚ましたことを感じ取ったらしいが、彼は指を引っ込めようとはしなかった。

「はぁ、美和子、美和子っ……」

なにこれ。頭の中が真っ白で何も考えられない。

間近にある先生の手首には、数珠がついたままで、其がジャリジャリと音を立てている。

そうか、私、先生の家にご焼香しに来たんだ。

たしか、彼は泣きながら私を抱きしめて、そして私も泣いたのだった。
そして落ち着いた後、この家には本に囲まれた部屋があると言われ、この部屋に連れてきて貰った。

そこまで思い出すと、私にのしかかる先生の向こうに、私たちを囲む本棚がひしめき合っている景色も目に入ってきた。

ここで私は手当たり次第のものを借りて読み始めたが、三冊目の半分くらいまで差し掛かったとき、泣き腫らした疲れからか、畳に体を倒して眠ってしまったのだ。

というのが、ここまでの経緯のはず。

先生に指を突っ込まれているこの状況は、眠ってから目を覚ましたら突然に起きていたことで、どうしてこうなっているのかは私も分からない。
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