不埒な先生のいびつな溺愛
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最寄り駅から十分は歩いた。

「はあ、はあ……」

都会から数駅離れただけの土地だというのに、駅に降り立つとその先は整備されていない道路ばかりの砂利道となっていた。
そこを抜けていくと、住宅街に入ることができる。

昔、“久遠くん”と一緒にこの道を歩いた記憶があるおかげで、私は迷わずに進んでいくことができた。

ローファーを履いていたあの頃は何とも思わなかったけれど、ここをヒールで歩くことは骨が折れた。

やっと先生の実家が見えてきて、私は駆け足になって残りの距離を詰めていく。

先生の家の玄関の前で、少しの間立ったままでいた。

この数日は、本当に長く感じた。これほど先生に会いたいと思ったのは初めてだ。

先生、落ち込んでるかな。泣いてないかな。
もう疲れて寝ちゃってるかな。

チャイムを押せば全て分かるのに、今になって、先生と顔合わせることが怖くもあった。
それでもチャイムを押した。返事はなく、代わりにドアが開けられた。

「……美和子……」

「先生、すみません、いきなり」

先生は喪服のままだった。腕には数珠もつけたままで、ドアを開けてくれたときはジャラッと音が鳴った。

私も告別式の日だということで勝手に喪に伏しており、ちょうど黒のスーツを着ていた。
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