不埒な先生のいびつな溺愛
坂部さんがこれから出掛けてしまうということは、先生はお父さんもいなくなった家に、独りで戻るということだ。

……先生は大丈夫だろうか。

デスクに戻って他の作家さんから預かっている原稿を読み出しても、先生のことばかり思い浮かんで内容がまったく頭に入ってこない。

「秋原さん」

そんな私の肩を叩いて声をかけたのは木島編集長だった。

「編集長……」

「気になるなら、久遠先生のところ行ってきなよ、どうせ締切迫ってるわけでもないし」

「いいんですか?」

「うん。先生のことも心配だしね」

編集長からお許しが出たところで、私は目の前のパソコンをすぐに閉じ、素早く荷物をかき集めた。

会社を飛び出して、駅まで走ると、ちょうど来ていた電車に飛び乗った。
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