彼のいちばん
しばらく単語の問題を出し続けていた二人だったが、途中でどちらからだったか話が脱線してしまったようだった。

『さらとは、最近どうなの?』

『うわ、それ聞くかー』

『なになに、なんかあったの?』

『逆だよ。何もない。クラス離れてまともに話さない。LINEの頻度も少ない。』

『あ〜、わたしも元彼とそういう感じだった。ていうか、わたしが一方的に避けてたんだけどね。』

『なんで?』

『なんでって…まあ、冷めちゃったんだよね。わたしが。かわいそうなんだけど、高校入って告白されて、浮かれてたの。それで、彼とわたしの間に温度差が出来てて。それに疲れちゃったの。』

『なるほどな〜〜おれもそんな風にあいつのこと悩ませてたりすんのかなぁ〜?』

『あれ、珍しく弱気だね。でも、悩ませてるのかなって、あんたもさらのことで悩んでるじゃない』

『いや、俺がどれだけあいつのこと考えて悩んで苦しんでも別にどうでもいいんだよ。あいつに悩んでる苦しませるなら、別れた方がマシだと思うんだよ。』

かのは、元彼との関係は冷めてから一年ほど続けていた。途中からは、元彼に自分の好意を押し付けられているような気分になっていた。

『竹下のその考え方、素敵だと思う。
…わたしはそんな考え方ができる彼氏をもったさらが羨ましいよ。』

かのは、無意識にこんなことを口に出していた。本心だった。
元彼はかののことが好きだったのかもしれないが、カレカノっぽいことをしたくて、それを押し付けられているだけのように感じていた。それがあったからこその言葉だった。

『はぁぁぁ〜〜、俺、彼女いなかったら、内田に告白してたかもしんない…』

『!?っちょあんた何言ってんの!アウトでしょ、それは…』

『ごめんって…、でも弱ってる時にそういうこと言う内田もひどいよ』

『そ、んなこと言われても…。
………でも、わたしも竹下に彼女いなかったら
…やばかった、かも』

お互い、二人の良さに気づくのが遅かった。
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