弱虫リフレクション【短編】
「鬼塚(おにづか)くん、玉木(たまき)くん、お疲れさま!」
遠くから響いた声。
大人っぽい艷やかなそれに、自然と身体が動いた。
振り向いてすぐ目が合い、軽く会釈する。
「お疲れさまっす」
黒のTシャツに迷彩柄のハーフパンツ。
動きやすい超ラフな格好をした俺──鬼塚幹也(おにづか みきや)は、額に浮かんだ汗を拭いながらそう答えた。
「本当、二人が来てくれて助かったわ」
声をかけてきたのは、栗原(くりはら)さんだった。
黒くて長い巻き髪が印象的な美人で、歳は確か5つ上だったって記憶してる。
「へへっ、そうっすか?」
俺は首に巻いたタオルを解き鼻をこする。
高校2年の俺は今、夏休みの真っ只中にいる。
立っているだけで汗が吹き出してくるような、このくそ暑っつい夏の夕暮れ前。
いったい、何をやってんのかって言うと……。