わたしのキャラメル王子様
6・幼なじみやめてみました
いつもより早めに家を出て、家から少し離れた大通りに出ると、悠君に電話をしようとスマホを出した。



ママが帰宅したことを知らせとかないと。
あの天然君のことだ、毎日一緒に寝てたけどそれがなにか?って普通に話しそうで怖い。



この時間ならそろそろこの辺りを通るはず。
キョロキョロ辺りを見回してみた。



「あ、やっぱりいた」



通話ボタンをタップする前に悠君をみつけられたことに胸が高鳴る。



向こうの通りから軽快な足取りで歩道橋を渡ってる。
でも悠君は階段を降りたところで足を止めてしまった。



階段の下には大量の荷物を下げたベビーカーにあかちゃんを乗せている若いお母さんがいて、その人はその場で立ち往生しているように見えた。



名前を呼ぼうとして、上げようとしていた手を下ろした。
悠君がそこを通過せずに、その人の前で立ち止まったから。



どうしたのか気になって離れた場所から見守っていると、その人は悠君に声をかけられて、戸惑ったそぶりをみせながらもベビーカーに座っていたあかちゃんを抱いた。



お母さんの戸惑いをよそに、悠君はベビーカーと荷物をひとまとめに抱えると、あかちゃんを抱いたお母さんを先に上らせて、そのあとについて向こう側の階段下まで降りてしまった。



おかあさんがしきりに頭を下げて、悠君は相変わらず爽やかな笑顔でそれに応えていた。



でもすぐにその場を離れずに、お母さんがあかちゃんをベビーカーに座らせるまで、ずっと荷物を抱えてくれていた。



安全ベルトを嵌めたのを確認すると丁寧にひとつずつ荷物を手渡して、お母さんに軽く会釈すると悠君はやっとその場を離れた。



スマートすぎるその一連の光景にぼんやり見とれていた私の熱が伝わったのか、階段を上ろうとした悠君はふいに振り返って私に気づいた。



私をみつけた途端にぱっと表情が明るくなって、部活の坂道ダッシュを思わせるかのような瞬発力でこっちに向かってきた。



「沙羅!」



一度立ち止まってこっちに大きく手を振った。



「そこで待っててすぐ行くから!」



ご主人様に向かって駆けてくる仔犬も敵わないような笑顔でこっちに走ってくる。それも何段飛ばしで階段を駆け上がってるんだかわからない。



「悠君あぶないから!ゆっくりでいいってば!」



もうあの笑顔がすぐそこまで来ている。このまま弾む息に触れられそうな距離に来られたら、私どうなっちゃうんだろう。ドキドキの止め方なんか、もうわからない。
怒濤のトキメキ!



「ハニーおはよ〜っっ♪……ん?あれ、れ」



「ん?えっ?…………悠君!?」



バタ━━━━ン!!!



なんと悠君は私のすぐ目の前で、糸の切れた操り人形みたいに道路に倒れ込んでしまった。

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