わたしのキャラメル王子様
「買い直してくる!」



「や、そこまでしなくていいよって、悠君!?」



猛ダッシュで教室を出ていってしまった。



「なんだったの今の?」



「さぁ、意味不明」



京ちゃんも悠君のこと不審者扱いしてたじゃん?
みんなにもクスクス笑われたし。



「沙羅、ヤバい!」



「なんで引き返してきた!?」



悠君はすぐ戻ってきたんだよね。



「早く!こっち!」



ぐいと手首を掴まれ今度は思い切り引っ張られて。



「ちょっともう、さっきから何なの!」



廊下に連れ出され、ほらと悠君が指差した中庭の空には。



「うわぁ……!」



鮮やかな七色のアーチがかかっていて、ぼんやりみとれていたら、あっけなくすーっと消えてしまった。



「よかった間に合って。一緒に見れた」



声に顔を上げると悠君が幸せそうに笑ってた。



「でもチョココロネは売り切れちゃったかも」



からのしょんぼり顔。



「えと、あの」



こういう時、なんの言葉も出てこないんだよね私。



「すごい、キレイだった!」



我ながら語彙力、ゼロ。



「いや、虹に見とれてる沙羅の方が……」



「ん?」



「や。なんでもない」



なんか下向いてモジモジしてたな悠君。



「いいのかなこれ。このままで」



「あっ!」



私の目線の先には、繋がれたままの手と手があって。



「いいよね?」



その手をきゅっとされちゃって。



「わぁぁ!」



恥ずかしくって振りほどいてしまったのはもう後の祭りってやつで。



京ちゃん含め、目撃していた人達にはひやかされ、悠君ファンからの刃のような視線を浴びる羽目になったんだった。



「チョコの部分あげるから、今度こそはんぶんこしよーね?」



と言われて「……うん」
とうっかり答えてしまったんだった。



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