わたしのキャラメル王子様
「ママ、俺にも味噌汁ちょーだい」



「はいはいどーぞ。お汁だけじゃダメよ?ご飯もおかずもサラダもヨーグルトも果物もグラノーラもヤクルトもね。育ち盛りだもん。蜂蜜なめてく?」



「朝御飯の量えげつないし全力でおばちゃんだね」



あんまり口うるさいと毒も吐きたくなるよね。



「でも沙羅ママのご飯美味しいし、俺これから太らなきゃいけないからちょうどいいよ、その量で」



悠君がママに極上のスマイルを見せたから、睨まれなくてすんだ。



「もう悠君ったら朝から嬉しいこと言ってくれちゃってママ幸せ!でもさ、なんで太る必要があるの?悠君スタイルいいのにもったいないよ?」



「スタイルとかどーでもいいわけ!大好きなあの子の理想の男になりたいの俺」



「なにそれ!なんかママきゅんきゅんしちゃう!」



悠君とママは果てしなく気が合うらしい。
二人がしゃべってるとまるでガールズトークなんだもん。
盛り上がっちゃって私が入り込む隙もない感じ。
てか悠君、私が太め好きって思い込んでない?



ご飯を食べ終えて、歯磨きして軽くメイク直しても、まだふたりの恋愛トークは尽きてない。



「あのぉ、先行きます。悠君ごゆっくり」



一緒に登校するのが目的じゃなかったのかぁ。目的は美味しい朝御飯とママとのトークなんだな。やっぱりいろいろ期待するだけ傷つきそう。



ほんとに置いてっちゃうもんね。
ふぅ、と小さなため息が出た。



玄関でローファーに片足を突っ込むと、隣には悠君の靴。
足までこんなにサイズ違うんだ。
胸がぎゅっとなる。



悠君は、17歳の男の子なんだよね。
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