折り鶴に、想いはあふれて
そして、バレンタイン。
チョコの準備はしたものの、彼の鞄に忍ばせることも手渡すこともできず、何度も部長席の前を通り過ぎる私を、呆れた親友の恵那が給湯室に引っ張り込んだ。

「しっかりしなよ。ほら、魔法、かけてあげるから」

恋に落ちたきっかけのクリスマスコスメ。
私は恵那の言うままに目を閉じ、彼女の手が顔の周りをせわしなく動くのを感じていた。

「大体、由真は部長のどこが好きなの」
「ちゃんと部下の仕事も見てるとこ。失敗したら冷たく怒られるけど、頑張りは褒めてくれる。そういうとこ、尊敬しててすごく好き。あと稀に見せてくれる照れた顔とかキュンとする」
「じゃあそれを伝えればいいじゃん」
「本人目の前にしたら言えないよー。まして付き合ってくださいなんて恐れ多すぎて」
「……だそうですよ」

んん?

私へじゃない呼びかけに疑問に思って目を開けると、恵那は私の頭より上をみている。恐る恐る後ろを向くと、そこには部長がいるではないか!

「部長?」
「あのな……」

部長の頬が軽く染まっていて、その照れ顔に私の頭は噴火しそう。

「……どんな企画でも出してもらわなきゃ評価のしようがない。ちなみに俺はお前を可愛いと思っているが、その企画(チョコ)、出してみる気はあるか?」

照れた顔に冷静な声。胸の中、あの日の鶴が羽ばたいて、怯む心に“好き”の衝動が勝った。

「お、お願いします!」

【Fin】

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