私が恋をしたのは小説家でした
はじめまして
中学3年生になって約5ヶ月が経った頃

いつもと変わらない通学路ぼんやりと歩いていた

愛読している小説を

ぎっしり詰まったカバンの中に押し込んで

暑いと思うのは、当たり前だろうが

やはり私は冬の方が好きみたいだ

他の人間は春や秋が好きだと言うのだけれど

どうも、それは私には理解ができないのだ

手がかじかんで

少し痛いと思うくらいが気持ちいい

そう思ってしまうのは、おかしいのだろうか

私は小説家が好きだ

正直、それがこの作者の本心だというのか

それは見当がつかないんだが

私にとってそれは

心地の良い疑問である

そして、唯一それを考えることが

私にとって生きる糧となるのである

世の中は生きにくい

そのように思う人も多いんだろう

私の好きな小説家も

どうやら自殺で死んでいたようだ

これは悲しい事実か

それとも、誰かが作った嘘か

そんなこと、誰も知る由もない

世の中は住みにくい

嘘と真実が混ざり合って

本当のものがわからなくなり

実に気持ちが悪い

私にとって小説は勇者であり、ヒーローであり

生きるすべだ

この無言の館を

そして、言葉の刃を

私は小説から学んだ

いつか住みにくい世の中を壊すために
< 1 / 19 >

この作品をシェア

pagetop