2月15日の告白【短編】
うん、やっぱりチョコは渡せない。


だって、私は知ってる。


ナギ君がなにを思って写真部に入部したのか、とか、なにを考えているのか、とか、そんなのはわからないけれど。


ナギ君は、私のことが。


「ありがとう」


ナギ君の優しい声が聞こえてきて、泣きそうになった。


私には、見せたことのない笑顔。


ナギ君は、私にだけ笑わない。


私にだけ、冷たくて。


私にだけ、毒を吐く。


ナギ君は、ナギ君は…………。


がさ、と紙袋が音を立てて落ちた。


二人がバッとこちらを向く。


「ご、ごめんなさい!」


なにに謝っているのか、自分でもわからない安い謝罪を口にして、とりあえず階段を駆け下りる。


涙が、目からこぼれ落ちる。


まって、なんで泣いてんの?


あの日、声をかけた時からずっと、気づいてたでしょ?


バカじゃないの、私。


『なにが、かはまだわかっていないけど』なんて、言い訳して、ごまかして。


ずっと、わかってたくせに。






私は、ナギ君のことが好きで。



ナギ君は、私のことが嫌いだって。







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