仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
第四章 揺れる恋心と信頼関係
慧さんと婚約者として過ごす日々も、一週間が過ぎた。

彼への淡い恋心を自覚してから、毎日些細なことにもときめいてしまって、夢物語の中にいるかのように気分が浮ついている。


慧さんのことを、もっと知りたい。

そう思うのに、食事や買い物……どこへ行っても、女性に囲まれてしまう慧さんを見かける度に、これ以上彼のことを好きになりたくない、知りたくないと胸が切なく痛む。

彼女たちは私の知らない慧さんをたくさん知ってるのだろう。
分かりきっているからこそ、酷く苦しくなった。


それでも理性では抑えられない場所で、真っ白だった蕾が鮮やかな桃色に色づき、日に日に膨らみを帯びていく。

叶わぬ恋と知っていながら、心のどこかで、どうしたら慧さんに振り向いてもらえるだろうか? とあれこれ考えている自分がいた。


居候をしている身なので、朝食や夕食を作るのは私が担当させてもらっていた。
慧さんが会社へ出勤したあとに食器を洗い、洗濯物を干す。

事務所のレッスンやカフェのアルバイトがあればそれに向かうのだが、今日は『エテルニタ』銀座本店ビルにて第二回目の撮影日だ。
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