仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
最初はウォークインクローゼットを右往左往しながら、今日着て行くための洋服を探していたのに。

いつの間にか思考が慧さんのことでいっぱいになっていたことに気がついて、かぶりを振った。


迫る時間を確認し、初夏を思わせるようなハイウエストのワンピースに急いで着替える。

全身鏡の前に立って、どこもおかしなところがないか再度確認しながら、ふと自分の顔を見つめる。
慧さんにひっそりと恋をしてから……なんだか少しだけ、顔つきが変わったような気がした。

以前よりも、透き通っているというのだろうか。
幸福そうな雰囲気を醸し出している。

自分で言うのもおかしな話だけれど、纏っている空気感が別人のように華やかになったような印象を抱く。
骨格さえ変わったように見えた。

こういうのを、“恋をしている顔”というのかな?

悔しいけれど、慧さんの言う通り。
恋をしている表情は今までの私とはまるで違うと思った。

慧さんの望むような婚約者の顔、ちゃんとできてるかな?

今度は慧さんに、褒めてもらえるかな……?

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