よくばりな恋 〜宝物〜


「そんな失礼なことせえへんよ」

指先で紅の髪を梳く空斗の、意外に真剣な瞳に紅が少し怯んだ。


「気になって仕方ない」


「・・・・・・は?」


「研修のときから気になってたんやけど、昨日のキミを見てなんやここがザワザワして」


空斗の指が自分の心臓を指す。


「今朝になってもザワザワが治まらなくて、会ったらなんでかハッキリするかと思って」


研修の間、紅はそんな親しく空斗と話した記憶がない。大勢の中に埋もれてしまうような平凡な紅の、何がそんなに気になるんだろう。


空斗が一房、紅の髪をすくい上げキスをした。


「綺麗な髪」


「か、髪フェチ・・・?」


「そうかも」


「それがザワザワの原因・・・?」



背中が空斗の胸に触れて、髪の毛を弄られて、もう紅には訳が分からない。


少しの間、考えこんだ空斗が両腕で紅を囲う。



「水沢さん、オレと付き合わへん?」



付き合う・・・?

ちょっとそこまで、とか?


なんでやねん!と脳内でひとりボケツッコミをしながら懸命に考える。

エイプリルフールはもう終わったし、空斗ほどの男が紅のどこが気に入ったのだろう?


「オレの顔、嫌い?」


滅相もございません。ブルブルと首を横に振る。


「嫌になったらすぐに言うてくれたらええし、付き合ってる間はオレ、大事にするよ」
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