よくばりな恋 〜宝物〜


入社2年目で研究で特許をとり、その優秀さ、見た目の美麗さ、育ちの良さ、全てが女子社員の憧れで、同性でさえ羨望の目を向ける。



どうして紅なのだろう?



わざわざ紅の顔を総務部まで見に来て、そう正直に言う女子社員も1人や2人ではなかった。



そんなの紅の方が聞きたいのに。



「紅!」

社食に行くと、既に席についていた同期の経理部の坂田乃里と、人事部の大崎佳代が呼んでくれる。

日替わりの鳥南蛮定食を取り、テーブルへ急いだ。

「紅、お疲れ様」

「うん、席取りありがと」

手作りのお弁当を広げた乃里と、きつねうどん定食を前に置いた佳代に応える。


「紅、今晩大丈夫?仕事終わる?」

「うん、このままだと定時に帰れそう」

いただきます、と小さく言い食べ始めた。


「乃里と飲めるのもあと少しやもんね〜」


佳代が泣き真似をする。


乃里は今年いっぱいで退職が決まっている。研究所に勤めるカレシが横浜に異動するのを機に結婚してついていくことを決めたから。

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