よくばりな恋 〜宝物〜


決して抱き心地は良くないだろうに、愛しそうに、大事そうに、抱いてくれて、終わると朝まで狭いベッドで紅は大きな身体で包みこまれるようにして眠る。



いちばんでいたかった。



ずっとずっと、いちばん愛されている存在でいたかった。



横浜に転勤になるのに、なんの言葉も貰えない。

3年付き合っても、何の約束もない。


それが答えーーーーーー。





「今日、なんや社食の人口密度高ない?」

卵焼きを頬張りながら乃里が顔を顰める。


「ああ、なんか研修あんのよ、入社2年目の」

佳代が答えた。



あまり食欲がない紅は早々に箸を置いていた。

「紅、どしたー?体調悪い?」

「あ、ううん。そんなことないよ」

「そう?顔色もよくないように見えるけど」

「平気、平気。午前中忙しかったし疲れてん」


そのとき、紅の向かいに座る佳代の後ろのテーブルが騒がしくなった。女の子が4人座っている。

何故か紅は視線が自分に向いているような気がした。
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