よくばりな恋 〜宝物〜


4人の内の1人が立ち上がり紅を見据える。


「水沢紅さん?」

「・・・?はい」


スラリとした身体、少し茶色がかったウェーブのかかった髪。

整った卵形の顔、くっきりとした二重瞼、ポッテリした官能的な唇。

美人という言葉がぴったりの女性。


「研究所で斯波さんと同じグループにいます、市田です」


「あ、はい」


「いつも斯波さんにはお世話になってます。優しく色々教わってまぁす」


一見、愛想の良さそうな表情なのに、彼女の何でもない言葉が何故か紅の心をザラリと不快に撫で上げる。


何か言われるのかと身構えていたら、失礼しますと4人で席を立って行った。何歩か歩いて4人が一斉に吹き出す。


「大丈夫やん、勝ってる勝ってる」

「ホント、全然やん」

「あいの方が絶対いいよー」





『あい』






ドクンっと心臓が大きく1つ打つ。



「なっーー!」

佳代が怒ってガタンと音を立てて椅子から立ち上がる。その音が合図だったように4人が早足で立ち去った。


周りの人の視線から庇うように乃里が背中から抱いてくれる。
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