よくばりな恋 〜宝物〜


「・・・・・・紅」



「横浜に行ってしまうまで・・・一緒にいたかった。だから、狡いことしてしまった・・・ごめんな・・・」



紅の言葉は空斗の胸に吸い込まれた。

苦しいくらいぎゅうぎゅうと力が込められ、空斗に抱き締められる。



「好きなら側にいてて。なんで好きなのにオレと別れようとするんや。横浜かて地球の果てかて一緒に行ったらええやないか」


絞り出すように言葉を吐く空斗に紅が驚く。


「オレが強引にして付き合い始めたから紅が本当はどう思ってるのか分からなかった。紅は優しいからオレに流されてるだけかもしれないって思ってた」


「そ・・・んなこと・・・」


「紅が思ってるよりずっとオレはヘタレなんや。ハッキリ好きやって言われたこともないのにプロポーズなんかして、拒絶されたらもう一生立ち直れへん」


「だって・・・!空くんは『あいがいちばん好き』って言ってーーーー今日市田さんに会って、ああ、この人が『あい』なんやってーーー」


空斗のシャツの胸の部分に温かいものが染み込み、やがて冷たくなっていく。いつもニコニコしている紅が空斗が好きだと言って縋り付いて震えながら泣く。誤解を解かなければと焦る一方で、空斗の胸の奥底に喜びがわいてきた。


紅を手放すつもりなんて小指の先ほどもないのに。


市田が「あい」という名前だと知らなかった。
空斗の「あい」は別にいる。先ずはそこから話さなければ。
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