雨と制服とジャージ
リビングはしん、と静まり返り、電池が入った時計の針がチクチク聞こえている。
それと……少しだけ速い、先生の鼓動も。

そして、先生よりずっと速い、私の鼓動も知られているんじゃないかと思うと。

「……濱崎」
「はっ、はい」
「お母さんとか、心配してるんじゃないのか」

あ、ああ。
そうかもしれない。

「あ、じゃあラインします……」
「ほう。お前はこの俺の前で堂々とスマホを出すのか。許せんな」

しまった!
うちの学校は携帯類の所持禁止。他の先生は見逃してくれるが、この氷上先生は、鬼の生徒指導!

キャメル色の鞄に片手を突っ込んだまま固まっていると、先生は「嘘だよ」と笑った。

「え……」
「連絡しろ。心配だろうし。俺が話してやろうか」
「あっ、いえっ……大丈夫です。わかってくれると思うので」

居残りで、
雨で帰れないけど、
先生がいてくれてるから、大丈夫。

って送れば、わかってくれると思う……。
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