嘘ごと、愛して。

正義は窓の外に視線を向けて言った。

「俺、どんな時も笑ってるけど。心から楽しいなって思えるのは、晴人と居る時と、それから、アンタ」

「なんで私?」

「理屈じゃないから知らない。笑ってる方が楽だからそうしてるだけで、いつもちっとも楽しくない。けど、アンタといると楽しいんだ。…留学が決まっていたから離れがたくなることが嫌で会いに行かなかったけど、」


正義は少し真剣な顔をして私と目を合わせた。


「いつか絶対、アンタに会いにいくつもりだった。あの日、泣いてた理由ちゃんと聞いてあげたかった」

「正義…」

「真凛と比べる必要なんてどこにある?」

また泣きそうだ。
村山志真のことを見てくれる人がいる。
そんな人と出逢える日を、ずっとずっと待っていた。

この気持ちは止められない。
一方通行であっても、私は正義がーー


「必要な時は、いつでも呼んで。俺はいつだって君の味方でいる。これからずっと会わないとしても、この気持ちは変わらないから。安心して」


真凛ではなく、志真に向けられた言葉。
どんな優しい言葉をもらっても真凛へのものだとそっと隅に置いてきた。
これからは彼が紡ぐ一言一言を、受け止めていくことができる。


「ありがとう。すごく心強いよ」

< 178 / 185 >

この作品をシェア

pagetop