嘘ごと、愛して。
時間をかけて飲んだはずなのに2人のマグカップは空になった。
「そろそろ行くか。帰り支度して外で待ってて」
伝票を持って立ち上がる正義にお礼を言う。
もう本当に最後なんだ。
たくさん伝えたいことがあったはずだ。
それなのに今は正義を引き止める言葉が見当たらない。
先に外に出ると、街中に溢れる恋人たちが目に入ってくる。休日だもんね、みんなデートしたいよね。
「それじゃ、また」
最後はあっさりだ。
お財布をポケットにしまいながら正義は歩き出す。
「正義、」
隣りに並ぶ。
「本当に本当に、沢山の嘘をついてごめんなさい」
「お互い様。俺は君が本当のことを言ってくれるまで嘘をつき続けようと思ってたけど、こうして打ち明けることができて良かった」
ポンポンと、頭を撫でてくれる。
最初からスキンシップが多かった。
何度もドキドキした。
抱きしめられた温もりも覚えてる。
離れたくない。
まだ、一緒にいたい。
ずっとこれからも、一緒にいたい。
「真凛も生徒会長もアンタのこと、待ってるよ。心配させるなよ」
ちゅっ。
そっと近付いてきた正義は、私の額に唇で触れた。
ほんの一瞬のことで、反応が遅れた隙に、
正義は離れた。
人混みにまじる正義の後ろ姿を追いかけようとしたが、タイミング悪く信号が赤に変わってしまった。