嘘ごと、愛して。
たくさんの優しさに包まれて身代わりの生活を送っていたんだよね。
「志真」
そう初めて名前で呼ばれ、くすぐったい気持ちになる。
「今、初めて自分の名前が好きになったかも」
「なんだそれ」
いつものように正義が笑ってくれる。
「正義に助けられた分、これからお返ししたいです。私なんかが、傍にいてもなんの役にも立てないかもしれないけど、それでもずっと一緒に居たいです」
「俺も」
「私、正義のことがーー」
続けようとした言葉を飲み込む。
正義は繋いでいない方の手を、私の唇に当てた。
「それは俺の台詞だから、とらないで」
俺に言わせて?
と、今まで聞いたことのないくらい甘い声で言われる。
けれどその目は真剣で、綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。
「好きだよ」
静かな声。
もう周りの雑音が聞こえてこなかった。
「志真には嘘をついてきたけど、"好き"の気持ちだけは全部本当だったよ。曖昧な態度で志真を傷付けたかもしれない。真凛に向けてのものだと、勘違いもしたと思う。それでも、昨日までの俺たちには必要な嘘だった」
だからね、志真。と、
正義は繋いだ手をギュッと強く握った。
「俺の全部を愛して欲しい。俺の重ねた"嘘ごと、愛して"くれますか?」