嘘ごと、愛して。

無言で正義の腕をとり、通行人の邪魔にならないところへ移動して大きく息を吸う。

さぁ、自己紹介を。

私たちは、ここから始まるんだよね?



「私、村山志真です」


構内アナウンスや行き交う人の話し声が響いているが、気にならなかった。


「村山真凛の双子の姉です…宜しくお願いします」


「俺は鈴木正義。"セイギ"って呼んで。…宜しく」


そっと手を差し出される。


「私のことも、"志真"でいいです」


手を重ね、ギュッと握り合う。


もう"村山ちゃん"や"アンタ"とは呼ばれたくない。

決して私のことを"真凛"とは呼ばなかった貴方の気遣いに今更、気付いたよ。

正義は最初から最後まで、"志真"として接してくれていたんだね。

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