色眼鏡
☆☆☆

「本当に、ごめんなさい」


老人ホームを出て、あたしは夏生に頭を下げた。


せっかくお婆ちゃんの調子が良さそうだったのに、あたしのせいで取り乱させてしまった。


「大丈夫だよ。あのくらいのこと、いつもあるんだから」


夏生はそう言ってほほ笑んでくれた。


あの後お婆ちゃんは施設の人に取り押さえられ、ベッドへと連れ戻されていた。


あたしを見た時の恐怖に歪んだお婆ちゃんの顔。


あたしは眼鏡にそっと触れた。


もしかしたらこの眼鏡についてなにか知っているのかもしれない。


けれど、それを聞けるような状況ではなかった。
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