色眼鏡
ぼやけた視界でも、歩いている内に馴れて来る。


トントンとスムーズに足は進む。


信号機も全体的にぼやけているけれど、色の把握ができれば歩く事ができる。


そう思っていた時だった。


横断歩道の向かい側から歩いて来た女性が途中で立ちどまるのがわかった。


どうやら、買い物袋が破けて中身が出てしまったようだ。


丸いものがコロコロと転がって来る。


あたしはしゃがみ込んでそれを手に取った。


オレンジだ。


袋の中からオレンジが次々と転がって行き、女性が慌ててそれを拾い集める。


あたしはオレンジを拾うのを手伝うため、手を伸ばした。
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