加工アプリ
もうこれ以上わけのわからない会話をしていたくなかった。


あたしは大股で歩き、教室へと続くドアの前まで移動した。


「あの加工アプリで写真を加工すると、本人も同じように変化する」


桜井君の言葉を聞きながらもあたしはドアノブへと手を伸ばした。


「徐々に徐々に変化する。だけど気を付けて1日に何度も加工すると、本人に反映される速度も速くなる。周囲にバレて怪しまれる可能性が高くなる」


あたしの手はとっくにドアノブに届いているのに、それを回す事ができなかった。


ジッと桜井君を見つめる。


桜井君はふわりとした笑顔を浮かべた。


「俺は1日に1回だけ加工するって決めてる。そうすれば誰にも気が付かれないから」


そう言うと、桜井君はズボンのポケットからスマホを取り出して、あたしへ向けて差し出して来た。
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