沈黙する記憶
そして……。


「……なんで?」


そう、呟いた。


穴の中にあったのは、黒い袋。


ちょうど僕が杏の体を詰め込んだのと、同じような袋がそこに埋められていたのだ。


僕はしばらく呆然としてその袋を見つめていた。


引きずり出して中を確認してみようか?


そう思うが、今はそんな事をしている時間なんてない。


すぐに穴を掘り直して杏を埋めてしまわなきゃいけない。


そう思うのに、混乱して体がいう事を聞いてくれない。


一度穴を埋めて、それから別の場所を探して……。


考えながら立ち上がると、足元がぐらついて再び膝をついてしまった。


もう立ち上がれないほどに体力を消耗してしまっているみたいだ。


一旦動きを止めた体はなかなかいう事を聞いてくれない。


「くそっ……」


ギリッと歯を食いしばってなんとか立ち上がったが……体の向きを変えた僕の視界に見えたのは、高校のクラスメートたちだった。
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