沈黙する記憶
☆☆☆

夏男の家から出て来たあたしたちは、無言のまま公園まで戻ってきていた。


夏男がほんの一瞬見せたあの顔が、みんなの脳裏に焼き付いて離れない。


「夏男は……千奈を杏だと勘違いしていたな」


そう言ったのは克矢だった。


「……そうだね」


「千奈は、身長と髪型が杏に似てるからね」


由花がそう言いあたしの髪にふれた。


「夏男のあの豹変ぶり……。杏がいなくなった日の事を思い出そうとして苦しみだしたよな」


裕斗があごに触れながらそう言った。
< 150 / 229 >

この作品をシェア

pagetop