沈黙する記憶
「そうだね」


あたしは頷く。


「例えば、夏男は何かを忘れていてそれを思い出そうとしたから、障害が出た。ってことはないかな?」


「何かって、なんだよ」


克矢が聞く。


裕斗は左右に首を振った。


「それはわからない。でも、きっと杏の失踪に関係している事だと思う。あの日、夏男は杏と会っていた。だけど記憶を消してしまうくらい衝撃的な事が起こり、夏男は記憶障害を起こした……。


そう考えれば、夏男は今も演技なんてしていなくて、本気で杏を探して心配していることになる。あれほどやつれている事も頷けるんだ」
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