沈黙する記憶
夏男の車が出てきたら、気づかれないように尾行するのだ。


「千奈、顔色が悪いけど大丈夫?」


由花にそう言われて、あたしは左右に首を振った。


「音声は聞いていた。途中からやけに静かだったけど、どうしたんだ?」


裕斗にそう聞かれても、あたしは返事をすることができなかった。


今ホテルの中で起こった出来事は、あたし達が想像している以上の出来事だっ
た。


「夏男が、杏に見立てたマネキンの首を絞めたんだ」


黙っているあたしに変わり、克矢がそう言った。


「なんだって!?」


裕斗が目絵を見開いて克矢を見る。


「マネキンを浴室に運んで、バラバラに切断して、ゴミ袋に詰めてた」


克矢はそう言いながら、身震いをした。
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