浮気の定理
最初は母を恨んだ。



なぜ、私を置いて一人で出ていったのかと……



父の愚行を知って、なおさら自分は母に捨てられたんだと実感させられた。



浮気をした夫の元に娘を押し付けていったのは、復讐なのかもしれない。



足枷をつけて、ざまあみろと遠くで笑っているのかもしれない。



そう思ったら、自分の存在が利用されたんだとしか思えなかった。



父は誠実ではなかったかもしれないけど、わたしのことはきちんと養ってくれていたと思う。



だけどやっぱり母を裏切っていたことには変わりなくて……



母のいない生活を強いられたのは、やはり父のせいなんだと、私は父を軽蔑した。
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