浮気の定理
恐る恐るリビングを覗くと、まだ勇はいなかった。



ただ先伸ばしになっただけだというのに、ホッとする。



冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを口に含むと、温まった体に心地いい水分が染み込んだ。



「涼子、こっちに来て座りなさい」



ビクッと体が硬直する。



いつの間にかリビングに現れた勇は、ソファーに座り難しい顔をして私を見ていた。



はい……と消え入りそうな声で答える。



それからゆっくりと勇の方へと向かった。



ソファーに座る勇の対面に正座すると、彼の言葉を待つ。
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