浮気の定理
「桃子んちにお泊まり……」



むにゃむにゃそんなことを口走る真由はそろそろ限界かもしれない。



一階にすでに停まっていたタクシーに真由を先に押し込む。



後から自分も乗り込むと、一人で住むあのマンションの住所を運転手に告げた。



走り出したタクシーの後部座席で、真由の頭を膝の上にそっと乗せる。



自身も背もたれに体を預けながら、真由の髪を撫でた。



こうしてるとあんな大胆なことするようには見えないのに……



真由の寝顔を眺めながら、そのギャップが可笑しくて、私は思わずふふっと小さく声を出して笑ってしまっていた。

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