浮気の定理
一人だけで悩んでいた時とは違う、頼もしさみたいなものを感じたのかもしれない。



なにより誰にも知られたくないと強く思っていたはずなのに、一人でも事情を知ってくれていると思うと、それだけで心強いと感じた。



「ありがとう……」



まだ涙でぐちゃぐちゃの顔を山本に向けて、無理に笑顔を作ってそう言った。



「きったねぇ顔、ほら」



そう言って手渡されたそれは、くしゃくしゃになったその辺で配られているティッシュだ。



「なんか……くしゃくしゃ」



「うるせぇな!だったら使うな!」



「ウソウソ!ありがとう、使わせてもらいます」
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